リファラル採用が注目される理由
採用難易度の上昇
労働人口の減少や高齢化により、採用難易度は高まる一方です。
また、今後は海外への人材流出も増加すると思われ、ますます国内企業の採用は難しくなっていきそうです。
特に、ITエンジニアや施工管理職のような転職市場にあまり転職希望者が出てこない、売り手市場といえる職種を採用する難易度の上昇は留まるところを知らない状態です。こうした中では転職市場のみでの採用では採用目標を満たせず、リファラル採用に取り組む企業が増えています。
ちなみに厚生労働省の統計によると、2022年6月の有効求人倍率はエンジニアが含まれる情報処理・通信技術者が1.45倍、施工管理職が含まれる建築・土木・測量技術者に至っては4.91倍と採用の厳しさが窺えるデータが出ています。
採用のミスマッチが大きな課題に
採用難が進んでいるにも拘わらず、3年以内の離職率は中途・新卒問わず3割前後と、3人に1人が3年以内に退職してしまっています。簡単に新しい人材を採用できる状態であれば早期離職により企業が受ける打撃も小さいですが、採用が難しくなればなるほどその損害は深刻です。そのため、できるだけミスマッチを無くし離職を防ぎたいという企業が増え、候補者に社内の実態を知った上で応募してもらえるリファラル採用が注目されているのです。
※入社前後のトラブルに関する調査2022(日本労働組合総連合会)
採用コストの負担増大
求人広告を出しておけば人が集まるという時期もありましたが、現在は、複数の手法を用いなければ優秀な人材を採用することが難しい時代です。そして手法が増えるのと連動して、それぞれの手法でツールを契約したり外部リソースを頼ったりする必要があるケースも多く、採用に関するコストも増えています。こうしたコストを少しでも抑えたいという企業の考えも、リファラル採用の注目度を上げています。
認知度が高くない企業でも取り組みやすい
リファラル採用は社員からの紹介をベースにして応募を集めるため、認知度が低い中小企業や設立間もないベンチャーやスタートアップでも効果が出やすいです。そのため、ベンチャーやスタートアップで特に注目が集まっていると考えられます。
リファラル採用のメリット
採用難易度が高い職種の採用に有効
採用難易度が高い職種の場合、求人媒体には求人が溢れており、ダイレクトリクルーティングでも多数のスカウトを受け取っているため、自社の存在が埋もれてしまうことがほとんどです。
しかしリファラル採用であれば知人の紹介から始まるため確実に自社を知ってもらうことができます。さらにそこからしっかりと魅力を訴求できれば、難易度の高い職種でも着実に応募へと繋げていくことができます。
マッチした人材を集められる
リファラル採用の場合、紹介者から会社の実状やいいところ、課題を聞いた上で応募してくれる方が大多数です。応募した段階からすでに自社のことを深く知ってくれているため、ミスマッチが起きにくくなり、リファラルでの応募者は通常の応募者より選考の通過率も高い傾向にあります。
また、実態を知って入社しているため、入社前と入社後のギャップから生じる「リアリティ・ショック」も発生しづらく、早期離職防止・定着率向上に寄与することが期待できます。
社員のエンゲージメントを向上できる
社員が自社の魅力を他人に伝える中で、自社の良い点や好きな部分を改めて認識することができ、会社への帰属意識や愛着の高まりに繋がります。また、そんな社員に誘われて入った新入社員も会社への愛着を持ちやすい状態で入社してきます。
さらに、リファラル採用促進のために社員が進んで知人・友人に紹介したくなるような組織づくりを行うこと自体も、社員のエンゲージメントを向上させます。
リファラル採用はうまく機能すれば、より良い組織づくりの影響で社員のエンゲージメントが向上する→知人や友人に紹介したくなる→紹介により入社したエンゲージメントの高い社員が増える→組織風土がよくなる→エンゲージメントが高まりさらに紹介が増える、といったよいサイクルを作ることができる手法なのです。
金銭的コストを抑えられる
リファラル採用の場合、社員からの紹介が中心となるのでコストがグッと抑えられる点も魅力のひとつです。
例えば紹介した候補者が入社した場合にインセンティブとして10万円を支給する場合は、採用単価は10万円となります。人材紹介の場合は年収の35%前後(年収400万円であれば140万円)、ダイレクトリクルーティングも利用料と併せて成功報酬が発生するサービスが多く、人材紹介ほどではないものの採用単価は高くなりがち。
こうした手法と比較すると、リファラル採用の採用単価の小ささは圧倒的です。コストを抑えたい企業にとって、とてもよい手法といえるでしょう。
リファラル採用のデメリット
複数人の離職に繋がるリスクがある
紹介者や紹介して入社した社員が退職した場合、残された側が気まずくなってしまい退職に繋がってしまうことがあります。あまりないかもしれませんが、特にリファラルでの入社があって数か月から半年などの短い期間で紹介者が退職した場合には注意が必要です。
どちらかが退職した場合のケアについても、事前に決めておくことでできるだけリスクを減らしておきましょう。
多様性のある組織を作れない可能性
社員の紹介となれば、社員と似た属性・性格の人がどうしても集まりやすくなります。似たような人が集まると、連携が取りやすかったり調和のとれた組織が作りやすかったりといったメリットもありますが、一方でなにか危機が起きたり斬新なアイデアが求められたりする場面には弱いというデメリットもあります。
導入前に自社の目指す組織形態を確認しておきましょう。もし多様性のある組織を目指す場合は、リファラル採用は一部の部署のみにする、採用する人の〇%までにすると決めるといった調整が必要になるかもしれません。
不採用時に配慮が必要になる
せっかく紹介したのに不採用となってしまうと、少なからず社員のやる気を削いでしまいます。不採用の場合は、紹介への感謝をしっかり伝えるなどケアを忘れないようにしましょう。また、紹介者と候補者の人間関係にも配慮が必要です。関係にヒビが入らないよう、不採用の場合でも候補者には丁寧に不採用理由を伝え、最後まで誠実に対応しましょう。
リファラル採用のコツ-準備編
ペルソナ像の設計
きっかけは社員の紹介であったとしても、縁故採用と違いしっかりと選考をするのがリファラル採用です。そのためもちろん、紹介があれば誰でもいいわけではありません。
一方で、せっかく紹介したのに不採用が続いてしまうと社員の紹介をしようという意欲が薄れてしまい、紹介が減ってしまいます。
社員にターゲットに合った的確な人を紹介してもらい、意欲を削ぐことなくリファラル採用に協力してもらうには、ペルソナの明確化とその周知が欠かせません。
スキルやこれまでの経験を中心に人柄や志向性など細かく設定し、社員に共有していきましょう。また、変更があった場合の共有も欠かさずに行うことが大切です。
以下記事では、採用要件(ペルソナ)のフレームワーク・設定方法について説明しております。ぜひご一読ください。
▽採用要件(ペルソナ)の設定方法&フレームワークを大公開▽
https://www.hear.co.jp/recruit/persona-make
会社紹介資料の作成
リファラル採用を行うためには、社員に会社のことを説明してもらう必要があります。しかし会社を紹介するといっても、何もない状態では何から話せばいいのか戸惑ってしまうでしょう。伝えるべき情報が伝えきれず、応募後に「思っていたのと違った」と思われてしまう可能性もあります。
こうした事態を回避するのに有効なのが、会社紹介資料の作成です。
資料をもとに話をすることで重要な情報を過不足なく伝えられ、グリップがしやすくなるだけでなく、社員としても話しやすいので知人・友人へリファラル採用の話をするハードルが下がります。
▽採用ピッチ資料(会社紹介資料)の制作方法を大公開▽
https://www.hear.co.jp/recruit/saiyoupitch-knowhow
余裕があれば、ネット上に公開するものに記載するのは難しいような、会社の内部事情を盛り込んだリファラル採用専用の資料を作ってみてもいいかもしれません。
リファラル採用制度設計
リファラル採用を成功させるには、制度設計が重要です。
リファラル採用に取り組む多くの企業が導入しているのが、紹介に対するインセンティブ設計です。紹介ごとに発生する場合と、採用決定の際に発生する場合があります。紹介ごとの場合、インセンティブを目的にターゲットに合わない紹介が増えることがあるというデメリットが、採用決定のみを対象とする場合は不採用による紹介へのモチベーションの低下が大きくなるといったデメリットがあります。
自社の社員の性格や状況に合わせて、工夫した制度設計を行いましょう。
また、リファラルを知人や友人に持ちかける際の会食費用やカフェ代を会社負担とすることを周知し、紹介へのハードルを下げておくことも、小さなことに思えるかもしれませんが意外と重要なポイントです。
リファラル採用のコツ-実践編
リファラル採用制度の認知
制度設計ができたら、早速社内で認知を広めていきましょう。
社内ポータルやチャットで共有して終わりでは忘れられてしまう可能性があります。
一度共有した後も、適宜声掛けや進捗の報告などを通して、社員がリファラル採用という言葉や取り組みに触れる機会を地道に作っていく草の根運動が重要です。
特にこれまで全社的な採用活動を行ってこなかった企業の場合は、全員への浸透には時間がかかることが予想されます。最初から全員に同じ熱度で協力してもらおうとせず、まずは積極的に協力してくれそうな人を中心に小さくスタートさせて、少しずつ社内全体に広げていくのが成功のコツです。
動機づけ
先述の通り動機づけには、報酬や評価といった外的要因に基づく外発的動機づけと、自分の興味関心や意欲によって生まれる内発的動機づけがあります。リファラル採用において望ましいのは内発的動機づけでの協力ですが、社員のエンゲージメントの度合いによっては難しい場合も。こうした際はまずはインセンティブや紹介数を評価の一貫とするなどの外発的動機づけによりリファラル採用を促進しつつ、内発的動機づけが生まれるような組織づくりを行い、社員のエンゲージメントを高めていくのがおすすめです。ただ、エンゲージメントにあまりにも大きな課題がある場合は、インセンティブを理由にターゲット外の人材の紹介が多く発生する危険性もあるため、課題を解決してからリファラル採用に臨んだ方がよいかもしれません。
行動
リファラル採用が動き出したら、指標となる数値を見ながらPDCAを回していきます。見るべき指標は「一人当たりの紹介数」「紹介に協力してくれた社員の割合」「応募からの内定率」です。見えてきた課題に応じて、社内での周知の徹底や協力を仰ぐための根回し、選考フローやアトラクトの改善、ペルソナの見直しなどを行います。
協力者への感謝と賞賛
協力してくれた人に対しては、感謝の気持ちをしっかりと伝えるようにしましょう。年間を通じてたくさん協力してくれた人を表彰したり、Slackなどのチャットツールでリファラル採用チャンネルを作り、協力者を共有したりするのもよいでしょう。金銭などの報酬もインセンティブですが、こうした感謝や賞賛も感情報酬として立派なインセンティブです。
おろそかにせずその都度人事が感謝を伝えることで、より一層協力してもらえることが期待できます。
リファラル採用事例 3選
SmartHR社
現在では内定者の3割がリファラルと大きな成功を収めるSmartHR社。
インセンティブや応募促進のための会食負担のほか、採用に至らなかった場合も会社負担で候補者を食事に誘える「ごめんねごはん制度」など社員の心理的ハードルを下げる試みを行っています。
富士通社
リファラル採用開始から1年で20名を採用という実績のある富士通社では、新入社員に入社時に紹介の方法やツールの使い方を説明する、人事部長から全社員に働きかけるなど社を挙げてリファラル採用に取り組んでいます。
また、4ヶ月の検証を経て制度をブラッシュアップするなど、制度設計にも力を入れています。
メルカリ社
メルカリ社では、創業時よりリファラル採用を行っており、そのかいあってか内定者の6割がリファラル経由とのこと。経営層からの呼びかけはもちろんのこと、社内外交流のための少人数のイベントなど積極的な施策が特徴的です。社員のハードルを下げるため、会食の報告は3行でOKというルールも設定されています。
まとめ
今回はリファラル採用について紹介しました。事例でも紹介した企業のように、リファラル採用は運用次第で多くの候補者を採用できる可能性を秘めた採用手法です。
一方で、制度設計や社内での浸透が成功の肝となるため、リファラル採用に関するナレッジがない状態では難しい場合も。また初期の段階では特に、促進のための一定の工数も必要にはなってきます。
HeaRではこれまで、リファラル採用に取り組みたいものの工数やナレッジが足りていない数々の企業のリファラル採用を支援してきました。
もしリファラル採用を始めることや現行のリファラル採用の制度に課題を感じられているようでしたら、ぜひお力になれればと考えております。一度お気軽にご相談ください。
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