ーー本日はよろしくお願いいたします。
まず、お二人の簡単な経歴やお仕事内容を教えていただけますか?
大原:成長企業×人事でキャリアを積んできました。30名→250名や600名→1,600名といった組織拡大のフェーズで経験しています。ラクスルには5年前に入社し人事部門やHRBP体制の立ち上げを経て現在は人事部長として人事部門の拡張や進化のデザインと実現を担当しています。
中久保:私は2ヵ月前に入社したばかりです。もちろん今回のインタビューのテーマであるワークサンプルも経て入社したので、経験したてほやほやの新鮮な気持ちをお話できればと思います。現在は、コーポレート採用チームに所属しています。
前職は鎌倉新書という終活関連サービス事業を行う企業で、人事総務部の責任者をしていました。上場前に新卒入社し東証一部まで、50名→200名弱の組織拡大のフェーズで、人事採用を中心に、営業、webディレクター、経営企画など幅広く経験させていただきました。
ラクスル社が重視する採用の3つのポイント
ーーありがとうございます!
では早速本題に入りたいと思いますが、ワークサンプルはいつ頃から導入されているんですか?
大原:2015年の9月頃です。2016年の私が受けた選考でもワークサンプルがありました。
ーー7年近くも前から行われているんですか!日本企業の中ではかなり早い段階での導入だったんですね。ワークサンプル導入に至ったのはどんな経緯だったのでしょうか?
大原:きっかけは『ワークルールズ』です。この本の発売は2015年の7月で導入が2015年の9月なので、当時の課題にフィットしていたことと「まずやってみよう」の姿勢が読み取れます。
ワークサンプルは重要ですがあくまで採用の1プロセスなので、ワークサンプルについて詳しい話の前にラクスルの採用にとって重要な3つのポイントについてお話しできればと思います。
一つ目は人件費あたりの価値創出が最大化されるか。
人件費や採用費は投資であり、投資には求めるリターンがあります。この意識は会社の拡大につれどうしても見えづらく薄くなっていきます。そのため採用に際しては「この採用によって顧客価値や事業数値がどうなるのか」を説明をして承認を得ることと責任が求められます。
また、組織KPIとして人件費生産性がどれだけ上がりその一部を人件費に再投資して報酬水準が上がっているのかなども重要視しています。
つまり採用によって事業をどうしたいかが明確にあり、その実現性を確認する場として面談やワークサンプルがあります。
二つ目はそれを長い時間軸で実現し続けられるか。個に目を向ければその人がラクスルで成長し続けていくかです。
採用時には入社時の役割やグレードだけでなく、いつどんな風にステップアップしていくかも描き、採用やオンボーディングのオーナーがそれを実現していきます。
ワークサンプルは入社直後のミッションのフィットをみる役割も勿論あるし、将来のもっと難しいミッションへの適正をみる場でもあります。
三つ目はそれらを総合して候補者様にとってハッピーな転職か。ラクスルに入社することで求めるキャリアがしっかり進んでいくのかを見ています。
仕組みとしては面談後に望むキャリアの内容やそれがラクスルにフィットするかを記入します。
候補者様にとってとても大事なことですし、ラクスルで大きく長く活躍してもらうことにつながるため会社にとっても同じくらい大事なことです。
この3つを満たす、「チームや事業を進化させる採用」を実現するためにワークサンプルを含めた採用プロセスが貢献しています。市況や社内の習熟や候補者様の反応など様々な変化に合わせてブラッシュアップしながら運用を続けています。
ーーラクスル様の採用への向き合い方はとても素敵だと思っていましたが、根底にはこんな考えがあったんですね!中久保さんはラクスル社の選考を受ける以前からワークサンプルはご存じでしたか?
中久保:他社の人事の方との会話で耳にしていて存在は知っていました。ただ詳しいことはラクスルの選考で、ワークサンプルの説明を受けるまでは殆ど何も知りませんでした。
ーー現在、ワークサンプルは、選考のどの段階で実施されているんですか?
大原:選考終盤です。最終面談の前であることが多いですが、時々の状況に合わせてケースバイケースです。
ーーなるほど、ありがとうございます。
実際にお二人がワークサンプルを受ける前はどんな印象を持っていましたか?
大原:私はあまり際立った印象はなくて「あ、やるんだ」くらいだった気がします。
中久保:私は正直少し不安感もありました。
ただ事前にワークサンプルについての説明・情報提供をしっかりとしてもらえたので、そこからは不安もなくなりました。説明を受けてからは、選考において取り組むべき課題が明確になったので、事前の課題も当日も楽しみながら取り組むことができました。
ワークサンプルの効果を最大化させるために
ーーここからは実際に実施してからのお話をお伺いできればと思います。
ワークサンプルに対する懸念点としてよく「辞退率」の問題が挙がりますが、実際はいかがですか?
大原:選考にかかる期間が長くなったり選考にかかる工数が増えるので一定数の辞退発生が自然だと思いますし、実際にラクスルでも少なくない選考辞退があります。
まずこの選考辞退の最小化は大切です。具体的には以下の様なことです。
- ワークサンプルの意義や意図を丁寧に説明する
- ワークサンプル経験者である社員が参加したメリットを共有する
- タイミングや実施方法も候補者様の状況に合わせて柔軟に対応する
上記ができている前提ではワークサンプルの選考辞退が大きな問題になることはありません。ある意味そのまま進んでも発生する内定辞退の前倒しだとも捉えることができます。初期接点で候補者様の意思を把握できているか、面接でしっかりアトラクトができているかなど良い採用活動には初期フェーズからの良質なコミュニケーションが重要です。それができているかを把握する絶好の機会と捉えることもできます。
更にもう一点。選考は早い方が良い、工数がかからない方が良いという考えが一般的でそれ自体は私もそう思う面もありますが、一方でそれが全ての求職者様の希望かというとそうではありません。自分のキャリアや今回の転職としっかり向き合っている方ほど選考のスピードや工数や合否以上に、その会社とのフィットの度合や確度を大事にしている側面もあります。
そういう方にとっては企業側が工数をかけてマッチングの見極めに力を入れて双方のハッピーを追求していることはポジティブに働くのではないでしょうか。実際にやってみて感じることとしては、このプロセスを貴重なものと捉えていただいたり、楽しんでいただける方が多いです。
ーー辞退を最小限にする取り組みや、アトラクト成否の測り方など、とても参考になります!
実際に選考に参加する社員さんたちの反応はどうですか?
大原:理解してくれていて協力的な社員が多いですね。工数はどうしてもかかってしまいますが、現状社員からの協力を集めることに関しては苦労していません。選考に参加する社員は自分たちもワークサンプルを経て入っているので、ある種それが当たり前のような感覚があるのかもしれません。本当に大変なのは選考に参加する社員よりもワークサンプルを作成する社員ですが、彼らは事業や部門を進化させる責任があるため必要なこととして前向きに捉えてくれています。
ーー選考における「ミスマッチ」も最近話題になることが多いですが、ワークサンプルを実施していることで、いい影響はあると感じられていますか?
大原:ワークサンプルのメリットは、「工数がかかる分、面談・面接だけでは見えないものが見えることもある」この一言に尽きると思います。何が見えるのかは実施側の意図やワーク内容次第ですが、面談・面接よりもより実務の状況に近いものになります。
また、候補者様の視点においてはご自身のパフォーマンスが発揮できる企業文化や人の相性、ミッションの期待などのフィットを見極めることができると考えておりセルフジャッジの精度を高めることもできます。
ーー続いての質問ですが、中久保さんはワークサンプルを受けたことでラクスルさんへの印象の変化などはありましたか?
中久保:一緒に働くイメージが鮮明になりました。
ラクスルのワークサンプルは予め与えられた課題に対して自分の意見を発表してから質疑応答に入るのですが、質疑応答というよりもディスカッションのような形で進みました。
当日は雰囲気がとても和やかで、一方的な選考という雰囲気がなかったのが印象的でした。企業と候補者ではなく、同じ課題に向かって共にアプローチしていくチームの一員として接してくれていると感じられ、ポジティブな印象を持ちました。
候補者側としては自分がどんな価値を企業に提供できるのか不安に思う方もたくさんいらっしゃると思いますが、ワークサンプルを通して企業の解像度があがることで実際の業務のイメージを持つことができるのは、面接では得られない体験だったと思います。
ワークサンプルは手段の一つ
ーー入社後のイメージをはっきり描けると意欲も高まりますよね。ワークサンプルを実施することで、内定~入社後においてあった変化があれば教えてください!
大原:入社後というよりも、どんな人と働くのかや仕事のミッションが想定通りなのかなどがわかることで採用の意思決定に効いていると感じています。内定率や内定承諾率が…というような採用活動の定量面の話ではなく、お互いに強い意思を持って選び合ったかという採用の質の面に影響があると感じます。
ワークサンプルの内容によってはNDA(秘密保持契約)を結んだ上で開示できる情報はできるだけ開示します。会社や業務のことを深く知った状態で意思決定できるのは大きいのかもしれないですね。
ーー知っていると安心して飛び込めますよね。中久保さんは入社してから、ワークサンプルがあってよかったなと思うことはありましたか?
中久保:事前に社内の情報がある程度見えていたので、スムーズに業務に入れた点ですかね。想定していたこととのギャップを感じることもなく、楽しく仕事に取り組めています。
ーー導入した結果、たくさんの良い効果があったんですね!
実際のワークサンプルですが、どのような内容で実施されているのでしょうか?
大原:わたしの時は特に事前課題はなく、前週の経営会議資料を渡されて、そこから自分なりの課題設定を1〜2時間ほど考えて役員全員の前でプレゼン&ディスカッションするというものでした。会社に人事の採用経験がほぼなかったのもあり当時はかなり粗めでしたね(笑)そこからブラッシュアップを重ね、現在は人事のワークサンプルも当時よりは洗練されたものになっています。
人事のワークサンプルは下記に公開されているので興味があればご参照ください。実際には人事と言ってもポジションは様々なので、これをベースにしてポジションや候補者様の志向性によってフォーカスを定めたりポジションに関連する詳細な定量情報を提供したりしています。
https://raksulinc.notion.site/Work-Sample-of-RAKSUL-HR-3b7f0f288a6b4dc7a489f01c6c960543
中久保:私のワークサンプルは、「ラクスル事業が今後成長していくにあたってどんな人事的な課題が出てくるか、またその解決策は何か」でした。冒頭で事前に考えてきた内容を資料を使って共有し、残りの時間はディスカッションという形で実施されました。全部で1時間程度だったと思います。
当日は、大原、採用マネージャー、HRBP、それに私の4人でワークサンプルを実施していただきました。一問一答ではなくディスカッションのようなスタンスだったので、選考の緊張感はありつつも比較的リラックスして取り組めたと思います。
アウトプットしきれていない私の考えを引き出してくれるような質問もありましたが、考えそのものよりも思考プロセスやディスカッションの中でのコミュニケーションのフィット感を見られているように感じました。
雰囲気も終始和やかで、ワークサンプルだからといって特別視していない雰囲気でした。
実際に社内の会議はこうなんだろうなと想像できるような自然な空気感で進めてくれたので、肩ひじ張らずに取り組めてとてもやりやすかったです。
ーー実際にワークサンプル選考を受けてみて、難しさや理解度はいかがでしたか?
中久保:ワークサンプル課題が比較的抽象度の高いテーマだったので、具体策まで落とし込むことが難しかったです。企業側と候補者側で情報格差があることは当然ですし、限られた情報の中からなるべく精度の高い議論をするのは普段でも起きることなので、言ってしまえば日常的なミーティングに近いものだったような気もします。
仕事で求められることのレベル感もある程度把握でき、とてもいい機会でした。
ーーありがとうございます!
もし差し支えなければ、ワークサンプル課題作成の際の思考プロセスや、期待するアウトプットなどを問題ない範囲で教えてください。
大原:情報を提供する/提供しないのバランスが難しい部分です。
このバランスを間違えて情報が少なすぎるとどこの会社でも当てはまるような普通のアウトプットになってしまいます。一方で多すぎると思考を誘導してしまうというか正解を見つけるような課題になってしまう。ワークサンプルでは正解を求めず思考のプロセスを見ることが重要なのでこのバランス感覚はキーポイントです。
また、どこまで行ってもラクスルの情報を全てインプットすることはできないので、資料や事前説明や途中質問会でもカバーできない情報は仮定して考えてもらうことにしています。
実際の仕事でも、ステークホルダーの思考や情報が全てオープンになっていることはほとんどありません。伏せられたカードがある中でどの情報に焦点を当ててどの方向からアプローチしていくのか考えていただくことがその方を理解するのに重要でワークには余白を用意しておくことも大切だと思います。
うまくワークサンプルが作れない時は採用ポジションへのリクワイアメントが曖昧だったりすることもあるので、ワークサンプルの作成は採用やその後のオンボーディングをうまくいかせる上でも重要なプロセスだと思います。
期待するアウトプットは採用ポジションによる差もありますが、人事部門においては課題への正確な回答や知識・スキルよりも、課題を設定することやフォーカスすべき点の定め方などの能力や物事に取り組む姿勢を見ています。
ディスカッションにおいても、現在募集しているポジションで想定している仕事ができるのかはもちろんですが、将来より高いレイヤーに到達し活躍できる人材なのかも含めて長期的な視点を持って臨んでいます。
ーー今後のワークサンプルのアップデート予定があれば教えてください!
中久保:ワークサンプル自体のアップデートはこれからも随時やっていく予定ではありますが、アップデートを重ねた結果、ワークサンプル以外のものになる可能性は十分にあります。
ワークサンプルは、「人件費あたりの価値創出が最大化されるか」「長い時間軸で見たときにラクスルでその人が成長していくか」「候補者様にとってハッピーか」という3つの視点を確認するための手段でしかありません。
ラクスルはまだ発展途上であり、これから入社する社員と組織を作っていく過程にあります。ワークサンプルという形にはこだわらず3つの指標をどう見極めていくかを模索していこうと考えています。
入社後にしっかりと活躍してもらうために、ミスマッチを防ぐような取り組みをこれからもやっていきたいですね。
ーー最後に、ワークサンプルを導入しようと思っている企業や、受験しようと考えている企業に一言お願いします!
大原:まず企業様にお伝えしたいのは大変だということ。はじめは「新ポジションで良い候補者様がいたがワークサンプルがないから選考を進められない」などの問題が発生することもあると思います。
大変なことも分かったうえでやる場合は、最初から手を広げすぎず小さく始めてみるのがよいのではないでしょうか。人事部門だけでやってみるのは良いでしょうし、矛盾しますがスタートアップの管理部門系職種は会社の発展と共に細分化していくのでその度に作るのは大変なのでその会社で解像度が高く採用数の多い職種がブラッシュアップしやすい面もあると思います。
候補者様に対してはワークサンプルを初めて受ける人は特に緊張してしまうかもしれません。一方的に評価される場ではなくマッチングを高めるための場として気楽に受けてもらいたいということをお伝えしたいです。
中久保:何度か申し上げた通り、ワークサンプルは目的でなくて手段です。ですが、より最適なマッチングを目指して相互理解を深めるには良い方法だと感じています。マッチングに課題を抱えられている場合は、導入してみるのも良いかもしれません。
ラクスルは、「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる。」というビジョンを掲げ日々邁進しています。
ラクスルは人事領域においても様々なチャレンジをしています。
お伝えしたワークサンプルだけではなく、人事におけるあらゆる分野で常に進化し、創造を続けています。
ラクスルのビジョンに共感する人事の方がいらっしゃればぜひご一緒させていただきたいと考えています!是非まずはカジュアルにお話しさせてください!エントリーお待ちしております!笑
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ラクスルでは、HRBPを積極採用中です!
https://hrmos.co/pages/raksul/jobs/CORP-BIZ46
ラクスルのHRBPについて
https://www.wantedly.com/hiringeek/interview/rc_kw7/
ラクスルの人事と現場の採用協力体制
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