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エンジニアの採用基準を策定し、自社が求めるエンジニアを定義するための7Stepをご紹介!(事例つき!)
2022-11-14

エンジニアの採用基準を策定し、自社が求めるエンジニアを定義するための7Stepをご紹介!(事例つき!)

監修者

HeaR株式会社 代表取締役 大上 諒
2016年、コンテンツマーケティング支援のサムライト株式会社に入社。同社で30社以上のメディア運営に携わったのち、新規事業の責任者として複数の事業立ち上げに従事。
2018年にHeaRを設立し、累計100社以上の採用支援に関わる。「青春の大人を増やす」をミッションに複数のHRサービスを展開中。

編集者

HeaR株式会社 編集部
採用のプロフェッショナルが複数在籍し、採用戦略・ブランディングから実行までを一貫で手がけるHeaR株式会社。
著者の詳しいプロフィール

目次

「エンジニアの採用基準は明確にするべきだ」

と採用市場では言われています。

「ではエンジニアの評価基準をどこに置けば良いのか?」「エンジニア未経験の人事なので、採用基準の設計の仕方がわからない」

という方も多いと思います。

HeaRでは累計50社以上のエンジニア採用基準の策定を実施し、エンジニア採用のトレンドについては熟知しております。そこでこの記事では、エンジニアの採用基準の設定の仕方を具体的な経験を元にお話します。

具体的には、

  • 採用基準とは
  • エンジニアの採用基準を明確にするメリット
  • 採用基準策定の失敗例
  • エンジニアの採用基準を策定するための7Step
  • 採用基準を策定した後の運用方法

などをテーマに、重要なポイントをご紹介していきます。

採用基準とは

採用基準とは『自社にマッチした人材を採用するための評価基準』を意味します。採用基準が明確であれば、自社が求めている人材を適切に採用することができます。逆に採用基準が曖昧であれば、採用のミスマッチに繋がってしまいます。

エンジニアの採用基準を明確にするメリット

続いてエンジニアの採用基準を明確にするメリットをご紹介します。

  1. 選考通過率が上がり、効率的な採用活動を進めることができる 採用基準が明確な場合、応募時点で内定を出せる人材かどうかが判断できるケースも増えてきます。そうすると選考通過率が上がり、合わない人材との面談/面接をできるだけ少なくして、採用活動を進めることができます。結果として効率的な採用活動を進めることができます。

  2. 属人的なジャッジを防ぐことができる 採用基準を明確にすることで「自社が欲しい人材」に対する共通認識を持つことができます。自社の採用面接における属人的なジャッジがなくなり、採用基準に対する認識を合わせて採用活動を進めることができます。逆に採用基準が曖昧な場合、ジャッジが面接官の裁量で決まってしまい、内定を出すべき人材を落としてしまうリスクが発生します。

  3. 自社の魅力の打ち出しが明確になる 採用基準を明確にすることで、自社が求める人材=ペルソナが見えてきます。ペルソナに刺さる魅力を整理し、絞って訴求することができるので、求人票やスカウト文章、面接でのアトラクトが強化されます。

採用基準策定の失敗例

採用基準策定を誤ると様々なリスクが生じます。ここでは、採用基準策定の失敗例についてご紹介します。

  1. 経営者や人事だけで決める エンジニアは専門性が高く、経験者でなければ完全に理解することは難しい職種です。そのため経営者や人事だけで決めてしまう場合、正しく採用基準を決めることができません。社内外のエンジニアと相談しながら、採用基準を決定しましょう
  2. 自社の理想だけで決める 採用は、常に市場と照らし合わせて進めることで、理想論に終着せず、現実的な目線で採用ができます。仮に自社の理想だけで決めてしまうと市場にいない人材を探すことになり、応募が来ない/応募が来ても選考が通らない。という状態になってしまいます。市場環境を調べ、時には媒体で検索をしながら、適切な基準を決めましょう。
  3. 競合調査せずに決める 「採用は競争」という側面を有しています。候補者は他社の求人と比較検討して、自社の求人を判断します。そのため競合調査せず、競合より極端に要件が高い/低いと意向が下がってしまうリスクがあります。競合調査しながら、適切な基準を設定することで他社と遜色ない求人にすることができます。

エンジニアの採用基準を策定するための7Step

続いてエンジニアの採用基準を作成するためのフローをまとめましたので、ご紹介します。

1. 事業上の理想状態を定義する

最初のステップは事業上の理想状態を定義することです。HR(Human Resource)と言われるように人事は会社の人的リソースを最適化する仕事です。事業戦略から下ろした組織戦略、組織戦略から下ろした採用戦略を策定することで自社にとって必要な人材を採用することができます。

2. 理想状態を実現する上で解決すべき事業課題(=募集背景)を整理する

採用は、課題解決の起点であるべきです。自社のリソースを最適化した上で、自社で解決できない課題を解くために外部から人材を迎え入れ、事業の成長を加速化させることが採用です。プロダクト開発戦略の中で解決すべき事業課題を整理することで、採用すべき人材の解像度が上がります。事業課題がイコール求人票上の募集背景になります。

3. 事業課題を解決するペルソナの策定

事業課題が整理できたら、「現状の開発組織の課題を解決できる人材」、すなわちペルソナを策定します。ペルソナは具体的であればあるほど良いですが、最低限設定すべき項目として以下項目をご参考いただければと思います。

  • 年齢
  • 年収
  • エンジニアとしての実務スキル
  • エンジニアとしての人柄、キャラクター
  • 例えば、どこの会社に所属しているか
  • どんなキャリア課題を抱えているか
  • 転職活動における軸、企業の選定基準

4. 内定を出すための条件の設定

ペルソナを決めたら、内定を出すための条件を設定します。ペルソナは自社が求める理想の人材。内定を出すための条件は、この項目に該当していたら内定を出し、自社に迎え入れるラインを決めるということです。

以下3つの観点で内定を出すための条件を設定しましょう

①実務スキル

エンジニアの実務として最低限求める条件を設定します

例)

  • 言語:Java, Javascript, Python, PHP, Ruby,
  • 職種:フロントエンド、バックエンド、フルスタック
  • レベル:独学・スクールレベル、メンバーレベル、シニアエンジニア、テックリード
  • 所属企業:自社開発か/受託開発、

②ソフトスキル

ソフトスキルとして、最低限求める条件を設定します。

例)

  • コミュニケーション:問題なくチーム開発ができるか
  • 論理的思考力:物事を端的に組み立てて考えることができるか
  • ファシリテーション:開発組織の会議体を前に進めることができるか
  • リーダーシップ:リードとして率いることができるか、マネジメントができるか

③志向性

エンジニアとして、自社とフィットする条件を設定

例)

  • 理念共感:自社のミッションやビジョンに共感しているか
  • キャリア志向:技術を伸ばしていきたいか、マネジメントに興味があるか
  • 働き方:ワークライフバランスをしっかり取りたいのか、しっかり働きたいのか

5. 必須要件の設定

必須要件は、面接をする上での最低要件です。すなわち書類選考通過条件が必須要件になります。書類で判断できる項目を設定することが望ましいため、実務スキルにフォーカスした項目を設定することをオススメします。

例①:フロントエンドエンジニアの場合

  • Vue.jsを用いたSPA(Single Page Application)開発経験
  • TypeScriptを用いた開発・運用経験

例②:バックエンドエンジニアの場合

  • バックエンドエンジニア経験3年以上
  • Laravel を使った開発経験

6. 歓迎要件の設定

歓迎要件は、必須ではないものの、自社にフィットする人材に持っていて欲しい要素を意味します。選考のOK/NGを判断する要素ではないですが、加点要素として加味されます。

例)

  • 採用や組織開発、DevOpsなどに携わった経験
  • テックブログやSNSなどの情報発信に抵抗のない方
  • PdMやデザイナー、ビジネスサイドのメンバーと開発に取り組んだ経験

7. 求人票に落とし込む

求人票は、候補者に対する要件定義書のようなものです。最終的に求人票に落とし込むことで採用基準策定が完了します。ポイントは、競合調査をしっかりすること。すなわち他社の求人票をリサーチすることです。自社の観点ではなく、他社の求人票を参考にすることで、適切な採用基準のラインが見えてきます。極端に募集背景の解像度が低い、必須要件が高い、年収が低い、などが発生した場合、修正をすることが望ましいです。

経験エンジニアの採用基準を設定する際のポイント

経験者エンジニアの採用基準を設定する際に、特に意識するべきポイントをご紹介します。

1. 技術的親和性の高さ

特に経験者のエンジニアを採用する際は、自社の開発環境と候補者の経験している技術スタックの親和性が高いかどうか、というポイントは採用基準に織り込むべき項目です。

ただし全く同じ技術ではなくとも、Vue.jsとTypescriptのように相性の良いフレームワークを経験しているケースもありますので、入社後にキャッチアップできる可能性もあります。入社後の伸びしろも踏まえた上で、どこまで技術的親和性を求めるのか、という基準は設定すべきでしょう。

2. エンジニアとして目指している将来像

エンジニアの中には、エンジニアリングマネージャーを目指しているタイプ、テックリードを目指しているタイプ、プロダクトマネージャーなど企画寄りの領域を目指しているタイプ、技術者としてスキルアップを目指しているタイプなど、様々な将来像の形があります。

本人が望んでいる環境を与えれるかどうかという観点を踏まえて、どういう志向のエンジニアを採用するべきか決めておくことで入社後のミスマッチを防ぐことができます。

未経験エンジニアの採用基準を設定するポイント

エンジニアの採用倍率が高くなる中、未経験エンジニアを採用して自社で育成する企業も増えてきました。未経験エンジニアを採用する際に特に見るべきポイントについてご説明します。

1. 独学かスクールか

未経験エンジニアが開発について学ぶソースは複数あります。Progateなどで自学自習で身につけたタイプ、プログラミングスクールなどで教えてもらって身につけたタイプなど、どういった環境で学んだかどうかで知識量が変わります。

2. ポートフォリオのアウトプットレベル

未経験エンジニアはレジュメだけでは判断できないため、ポートフォリオを参考に判断することをオススメします。特にプログラミングスクールに通っていた候補者の場合、スクールでポートフォリオを作成したけれども、自分ひとりでは構築できないという候補者もいるため、しっかりと見極めることが大切です。自社で独自のワークサンプルやコードテストを設けるのもオススメです。

採用基準を設定した後の運用方法

採用基準は設定して終わりではありません。しっかりと運用に繋げてこそ効果を最大限発揮します。本パートでは、採用基準を設定した後の運用方法について解説します。

1. 面接のジャッジ基準に落とし込む

先程設定した、内定を出すための条件や必須/歓迎要件を、面接のジャッジ基準に落とし込みます。そうすると自然と面接での質問項目なども設定することができます。面接官各々が属人的に判断する選考ではなく、明確に設定した基準に基づいて選考を進めることができ、標準化することができます。

書類選考通過基準、一次面接通過基準、最終面接通過基準などに落とし込むことで採用基準を設定した価値が発揮されます。

2. 社内外に周知、浸透させる

設定した採用基準をしっかりと周知、浸透させることで、決めたことが運用になります。社内は面接に関わるメンバー全員、社外はエージェントや媒体担当者などにもしっかり共有し、齟齬がないように認識を合わせておくことで、ズレが解消できます。ドキュメントなどに落とし込んで、同じ目線で見れるようにすると尚良いでしょう。

3. 結果を分析しながら、改善を繰り返す

一度決めた採用基準は、完璧ではありません。選考の歩留まりや面接官からのフィードバックを分析しながら、必要に応じて修正、改善を繰り返していくことも必要です。振り返りを欠かさず、練度を上げていくことで、解像度の高い採用基準が設定できます。

また特に変化の激しいスタートアップでは、市場の変化や投資家とのコミュニケーションの中で、事業及び組織状態が変化することも多々ありますので、そういった変化にも柔軟に対応していくことが求められます。

参考にしたい求人票事例

1. LayerX社

LayerX社の求人は、詳しく記載しつつも、必須要件は最低ラインに落とし込み、歓迎要件で求めたいレベルを明確に表現しているのが特徴です。以下はシニアソフトウェアエンジニアの求人ですが、応募のハードルを下げつつも、自社が求めている人材がよくわかる求人です。

💡 必要な条件/経験

• Webアプリケーションの開発・運用経験 

• 一定規模における商用サービスのバックエンドAPIの設計 / DB設計の経験 

• UXを意識したWebフロントエンド実装の経験 

• サービス全体の技術選択やアーキテクチャ設計・構築を行った経験 

• DB やその他ミドルウェアのトラブルシュートの経験

 • プロダクト全体設計 / オペレーション構築をリードし、チームを率いてプロジェクトを推進した経験 

• 日本語にてコミュニケーションが可能なこと / Native-like fluency in Japanese

💡 望ましい経験/スキル

• Goでの開発経験。AWSでの開発経験 

• 事業立ち上げ経験や顧客のフィードバックを受けながら機能改善した経験 

• 新しいサービス、ツール、ソフトウェアの動向を追い、自ら手を動かし検証した経験 

• 中〜大規模サービスの設計、運用、構築経験 • 可用性 / セキュリティ / 耐障害性の観点及びビジネスとしての必須要件を元にクラウド上でインフラを適切に設計し構成管理できる

 • TypeScript, Vue.js での開発経験 • お客様の体験を強く意識したWebのフロントエンドを構築した経験

 • BtoBシステム について、プロダクト全体設計 / オペレーション構築をリードし、複数のエンジニアを率いてプロジェクトを推進した経験

 • 経理/会計関係(及び関連プロダクト、SaaS等開発)の知識

【バクラク】シニアソフトウェアエンジニア / 株式会社LayerX

2. サマリー社

サマリー社のTechnical Lead - Server-sideの求人です。求める人物像にツールや組織状態から下ろした人物イメージが明確になっており、どういったテックリードを求めているのか理解しやすい求人です。

💡 【求める人物像】

• 自身の領域で問題が起きた時などに積極的に行動しイニシアティブを持って素早く対処できる。 

• チーム内の生産性向上のためにツールやCI/CDの整備やコーディング規約などの改善、情報共有(Docs、Notion)などを進める事ができる。 

• 常にユーザ目線で物事を考え、ユーザー(エンドユーザーに限らない自身のアウトプットの受け手全般)にとってより良い形のものを担当する職務の観点から考え、提供することができる。 ・マネージャーから細かいフィードバックを受けずとも自身でスピード感をもって学習し、着実に物事を進めることができる。 

• 経験が浅いメンバーなどが障壁となっていることに対して適切なアドバイスや軌道修正ができる。 

• 自分自身の仕事やそれに付随する仕事に関わる問題・課題(不明瞭、矛盾、技術的制約など)を先を見越して特定する。それらの問題点を早期に伝え軌道修正ができる。

 • 弊社が大事にする「UXオリエンテッド」を社内でも意識し、仕様や設計などを他部署が理解できるように伝えられる。

Technical Lead - Server-side / 株式会社サマリー

番外編:採用における重要3か条

番外編として、採用基準を設定した上で、人事及び選考担当者が注意すべき重要3か条についてご紹介します

①現在の募集求人や応募した求人に限らず、幅広く自社のポジションを検討しょう

特に書類選考をする時は、幅広く自社のポジションを検討しましょう。「現在募集していないけれども、中長期的に必要になるかもしれない」「応募したポジションはテックリードだが、フロントエンドエンジニアのメンバーなら可能性がある」というケースも多々あります。

②「興味」「関心」「共感」「原体験」などを書類選考や、一次面接などで落とす理由にはしないようにしましょう!

最終的に、「共感」は大事です。但し、書類選考で、「共感」を求めてはいけません。レジュメ上に記載しないけれども自社との共通項があるかもしれないですし、まだ関心が高まっていないためです。まずは、可能性を見出す書類選考、面接うを進めましょう。

③「ジャッジ」と「アトラクト」をバランス良く使い分けて、選考をファシリテーションしましょう

採用基準を明確に決めれば決めるほど、面接官は「ジャッジ」だけを重視するコミュニケーションを重視しがちです。しかし、候補者の意向が低い「ジャッジ」の質問ばかりをしてしまうと「なぜ一方的に見極められなければいけないのか」という心象になってしまい、候補者体験を損なってしまいます。

あくまでも「選考はお互いを見極める場」として、「ジャッジ」と「アトラクト」をバランス良く使い分けて、選考を進めましょう。採用基準を適切に見極めても、自社を魅力的に思っていただかなければ、候補者は辞退してしまいます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

エンジニアの採用基準について正しく理解し、自社の採用力を高めていきましょう。

特にエンジニアのような専門職種は人事だけで採用基準を決めることが非常に難易度が高くなってしまいます。CTOや現場のメンバーを積極的に巻き込みながら、「自社が本当に求める人材とはどういったエンジニアなのか」しっかりと定義をすることが大事です。

始めは時間がかかってしまいますが、この採用基準の定義をしっかりできるかどうかで、選考通過率が変わり、最終的には採用成功する確率が高まります。

エンジニアの知識が豊富なのは当然現場のメンバーですが、採用面でリードするのは人事及び採用担当の役割です。しかしエンジニアが未経験でどういう風に推進していけば良いのか、迷っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

HeaRではエンジニア採用に精通したコンサルタントが多く在籍しており、エンジニア採用独自のノウハウを持っております。

本記事をお読みいただき、エンジニア採用戦略の立案方法、採用基準の設定方法や運用方法などについてもっと知りたいと思って頂いた方は、ぜひHeaRにご相談ください!