面接設計について
選考基準の明確化とすり合わせ
まず必要なのが、選考基準の明確化です。
非常に専門的な仕事であるエンジニアの採用は、人事だけで成功させるのは難しく、現場との連携が欠かせません。ただ、多くの部署が絡むとよく出てくるのが双方の認識がズレていてうまくいかないという問題です。
こうした問題を防ぐために、選考基準を明確にした上で認識を確実に合わせておくことが重要です。具体的には、現場の人と人事部が一緒になって任せたい業務とそのために必要なスキルを明確化しましょう。その際に、必要なスキルがあることをどのように判断すれば良いかも現場サイドから伝えてもらっておくとその後がスムーズになります。また、エンジニア領域に知識がない人事担当者の場合は、最初は現場の人が行う面接に同席後、判断ポイントを教えてもらうなどの方法で認識をすり合わせるのもよいかもしれません。
構造化面接を行う
構造化面接とは、あらかじめ質問項目とそれぞれの項目ごとに評価基準を決めておく面接手法のこと。いわばマニュアル化された面接といえます。
構造化面接は非構造化面接(面接官の裁量により行われる自由な面接)に比べて、入社後の活躍を予測しやすいと言われています。実際に、1998年に発表された研究論文では、非構造化面接の決定係数(入社後の活躍をどれだけ予測できるか)が0.14なのに対し、構造化面接では0.26と倍近い相関関係があることが示されました。
構造化面接を行えば、正しく見極めができてミスマッチ防止に繋がるだけでなく、ある程度マニュアル化されるので経験の浅い人でも面接を行いやすくなるというメリットもあります。
構造化面接には「STAR面接」と呼ばれるスタンダードな方法があります。これは、下記の4要素を順番に尋ねていき、その深掘りを通じて候補者の行動特性や価値観を知っていくものです。
- Situation:環境や背景
- Task:課題や役割
- Action:本人の行動
- Result:その結果
構造化面接についてもっと知りたい方は、下記の資料もダウンロードください。
評価シートの作成
面接で質問する項目と評価基準が決まったら、次にするべきなのが評価シートの作成です。
面接で重要なのが、前回の面接官からの引継ぎ。これがうまくできていないと、前回と同じことを聞いてしまったり、候補者のインサイトからズレた自社の魅力をアピールしてしまったりと、本来ならばうまく行くはずの採用でも上手くいかなくなってしまうことも。
全体で統一した評価シートを作っておくことで誰が見ても前回の面接内容を理解することができるようになります。
また、評価シートに質問項目も記載しておけば面接に慣れていない面接官でもスムーズに面接を実施することができ一石二鳥。選択式にできるところは選択式にするなど記入しやすい工夫をしておくと、記載する負担が軽くなりおすすめです。
候補者に伝えるべき魅力を整理・共有しておく
面接は、自社が候補者を判断するだけでなく、自社も候補者に判断される場です。特に採用難易度がきわめて高いエンジニアの採用では、企業側が自社をアピールする努力は欠かせないのが現状です。
自社をアピールするためには、自社の魅力を把握しておくことが欠かせませんよね。また、人事部では魅力をはっきり言語化できていても、現場に共有できていなければ現場での面接でしっかりアピールができなくなってしまいます。下記の採用の4Pに沿って自社の魅力を言語化・現場と共有しておきましょう。
- Philosophy(企業理念)
- People(人・文化)
- Profession(事業・業務内容)
- Privilege(働き方・待遇)
そして面接や面談で候補者の心に響く魅力はどれであるか見極め、その魅力を訴求することで自社への意向を高めてもらいやすくなります。
オンラインに特化した選考フローを作る
エンジニアはリモートワークをしていることがほとんどです。なかには、フルリモート・首都圏以外で仕事をしているエンジニアもいます。リモートに慣れている方は、選考もオンラインを希望することが多いです。エンジニア向けに、オンラインに特化した選考フローを作っておきましょう。
選考のオンライン化には、ただこれまでの選考と同じことをWeb会議ツールで行うなどの対応では不十分です。
HeaRでおすすめしている手法のひとつが、オンライン体験入社です。
これまでの体験入社であれば準備に時間がかかったり多くの人の時間を取るため調整が難しかったりということがありました。しかしオンラインであれば、簡単な説明にはアーカイブ動画を利用できますし、候補者とのやり取りもチャットなどのオンラインが中心となるので対面に比べて時間を取りやすくなります。
同時に、Web面接だけでは見極めきれない普段の業務スタイルやコミュニケーションスタイルを見極められるという効果も期待できます。
以下の記事では、オンライン面接のコツを解説しております。是非ご一読ください。
▽オンライン・Web面接|500回実施した担当者が教えるリモートのコツ▽
オンラインとオフラインの使い分け
先程はオンライン化についてお伝えしましたが、オンライン化が進んだからといってオンライン一辺倒になってしまうのは危険です。
候補者によっては、オフラインで会社の空気感を体感してから入社を決めたいという人もいます。実際に弊社が行った調査では、候補者の65%から「選考の中で一度はオフラインで話したい」との回答が得られました。
それぞれの候補者に応じて、できるだけ柔軟に対応できる体制を作っておくのがベストです。面接の案内時に、オンライン希望か対面希望かを尋ねてみるのもよいでしょう、HeaRでもこの方法を取っています。
事前に情報共有を行っておく
候補者へ事前に情報提供を行っておくことで、候補者が自社への解像度が高い状態で面接に臨んでくれます。会社説明の時間を短縮し、候補者の話を聞いたり面接でしか聞けないようなことを質問してもらったりとお互いに濃い時間を過ごすことができます。
また、事前に情報を送っておくことで自社とミスマッチを起こす可能性の高い候補者が「この会社は自分と合わないかもしれないな」と感じ、辞退に繋がるということもあります。辞退というとよくないように思えるかもしれませんが、マッチ度の低い方からの辞退は双方の時間を無駄にせずに済む「よいこと」です。こうしたスクリーニング効果のほか、情報を提供することで「透明性が高く誠実な会社だ」と候補者に好印象を持ってもらうことにも繋がります。
面接前後の連絡を丁寧に行う
よりよい面接をするために大切なのは、面接をしている時間だけではありません。前後の連絡もしっかり丁寧に行う必要があります。
面接前におすすめなのがリマインド。特にエンジニアは多忙かつ多くの企業からスカウトが来ているため、ふとしたことでキャンセルされてしまうこともあります。選考が進んでくればこのようなことはあまりありませんが、カジュアル面談フェーズでは注意が必要です。
前日に面談のリマインドと併せて、意向を上げるようなコンテンツを送るのがよいです。
また、面接・面談後も候補者と話してみての印象やよかった点などを早急に送るのがおすすめ。こうした小さいことから、求職者の意向を上げていきましょう。
エンジニア採用面接質問例
どんなサービスを開発しましたか?
これまで開発に携わってきたサービスは、エンジニアの技術や経験を知るのに必ずしておきたい質問です。どんな役割を担ってきたかも併せて聞いておきましょう。
これまでにどんな言語や開発環境を使ってきましたか?
経験のある言語や開発環境を知ることで、自社の業務とのマッチ度を測ることができます。
自社で使用するものはもちろん、親和性の高いツールであれば活躍できる可能性は高いでしょう。その点も現場のエンジニアにあらかじめ聞いておくと判断がしやすくなります。
業務で問題が起きたとき、どんな風に問題を解決しましたか?
問題に対する向き合い方を知ることで、課題解決力のような思考力や粘り強さといった精神面も確かめることができます。
周囲の仲間に助けてもらった経験はありますか?
助けてもらえる人というのは人柄がよく人望のある人が多いです。また、自分の成功をどれだけ他人のおかげと思っているかという謙虚さや人間性もわかります。
顧客折衝の経験はありますか?
顧客対応が発生するエンジニアの場合、必ず聞いておきたいのがこの項目です。また、エンジニアには技術だけを極めていきたい人もいるため、顧客折衝業務があることは早いうちに伝えておきましょう。
もっとも大きな権限や責任を任せられた仕事はなんでしたか?
大きな権限を任されるということは、技術力が高いエンジニアであることが推測できます。どんな仕事を任せられるかのいい指標にもなります。
開発においてもっとも大切なことは何だと思いますか?
候補者の開発に対する価値観を知ることで、自社の開発スタイルとのマッチ度を測るための質問です。
働く上で大切にしたいことはなんですか?
給与、ワークライフバランス、やりがいなど仕事に求めるものはさまざま。自社が提供できるものと候補者の求めるものが合っているのか確かめておきましょう。
今後はどんなキャリアを築きたいですか?
技術力を磨きたいのか、ビジネスサイドにも興味があるのか。さらにどの程度まで成長していきたいのかなどを聞くことで、募集ポジションとのマッチ度を見極められます。
やりがいを感じるのはどんな時ですか?
候補者のモチベーションの源泉を理解できます。自社の社風や任せたい仕事と合っているか測るための重要なポイントとなります。
こんなことはやりたくないと思うことはありますか?
やりたいことよりも、やりたくないことに人間の価値観は色濃く出ます。これを知ることで、自社や組織に馴染めるかを見極めるのに役立ちます。
まとめ
今回はエンジニア採用における面接設計についてお伝えしました。
面接をより良いものにして採用活動を成功させるためには、選考基準の明確化や選考フローの見直しといった上流の設計から、現場とのこまめな連携や候補者への丁寧な連絡といった些細なことまで、幅広い改革・改善が必要になるかもしれません。
HeaRでは、これまで100社以上の採用コンサルティングを行ってきました。その中で、エンジニア採用にも数多く携わっています。
もし、エンジニアの選考で歩留まりが発生しているものの解決策がわからない、自社だけではリソースが足りないので外部に委託したいといった課題を抱えている人事担当者さまがいらっしゃいましたら、ぜひHeaRまでお気軽にご連絡ください。