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【事例あり】カルチャーフィットとは?注目される理由や採用活動への活用方法を解説
2024-09-03

【事例あり】カルチャーフィットとは?注目される理由や採用活動への活用方法を解説

監修者

HeaR株式会社 代表取締役 大上 諒
2016年、コンテンツマーケティング支援のサムライト株式会社に入社。同社で30社以上のメディア運営に携わったのち、新規事業の責任者として複数の事業立ち上げに従事。
2018年にHeaRを設立し、累計100社以上の採用支援に関わる。「青春の大人を増やす」をミッションに複数のHRサービスを展開中。

編集者

HeaR株式会社 編集部
採用のプロフェッショナルが複数在籍し、採用戦略・ブランディングから実行までを一貫で手がけるHeaR株式会社。
著者の詳しいプロフィール

目次

近年、企業の採用活動において「カルチャーフィット」という概念が注目されています。カルチャーフィットとは、「企業の文化と個人の価値観や行動様式が一致すること」です。カルチャーフィットによって、組織全体の一体感が高まり、働きやすさの向上をもたらします。

一方、実際の採用活動においてカルチャーフィットを意識するには、具体的にどのように進めれば良いかわからない方も多いでしょう。そこで本記事では、カルチャーフィットが注目される理由や採用活動への活用方法について具体的な事例を交えながら解説します。

カルチャーフィットとは?

カルチャーフィットを採用活動に取り入れていくためには、そもそもカルチャーフィットを正しく理解することが必要です。ここではカルチャーフィットの定義やスキルフィットとの違いを解説します。

カルチャーフィットの定義

カルチャーフィットは、企業と社員が共有する価値観や行動規範がどれだけ一致しているかを示す概念です。例えば、企業が「顧客第一主義」を掲げている場合、社員も同様の価値観を持っていることが求められます。

価値観が一致していれば、社員は自分の価値観に基づいて自然体で働くことができ、企業のミッションやビジョンに共感しやすくなるでしょう。これにより、企業全体としての一体感が高まり、働きやすさが向上します。結果として、社員のモチベーションが向上し、早期離職の防止にもつながるのです。

カルチャーフィットとスキルフィットの違い

カルチャーフィットとスキルフィットは、採用活動における重要な要素ですが、それぞれ視点が異なります。スキルフィットは、応募者の持つ技術や経験が企業の求める要件とどれだけ一致しているかに焦点を当てます。

一方、カルチャーフィットは、企業の価値観や文化と応募者の価値観や行動様式がどれだけ一致しているかを重視します。したがって、スキルフィットが技術的な適合を図るのに対し、カルチャーフィットは組織の一体感や働きやすさを確保するための適合を図るものです。採用活動を効果的に進めるには、両者をバランスよく考慮することが欠かせません。

採用活動においてカルチャーフィットが重視される理由

企業が持続的に成長し、社員が長期的に満足して働くためには、単にスキルがマッチするだけでなく、価値観や行動様式も一致することが重要です。カルチャーフィットが採用活動で重視される背景には、現代のビジネス環境の変化が関係しています。主な理由を2つ解説します。

売り手市場により人材不足が深刻化しているため

現代の採用市場は売り手市場と呼ばれる状況にあります。企業は優秀な人材を確保するために競争が激化しており、単なるスキルや経験だけでなく、企業文化との一致も重視されています。スキルフィットだけではなくカルチャーフィットも重視することで、長期的に活躍してくれる社員を確保できます。

求職者側からしても選択肢が多い中で、条件や待遇、仕事内容だけではなく、「自分の価値観に合うかどうか」も基準のひとつとしています。

価値観の変化により働き方が多様化しているため

近年、働き方の価値観が大きく変化し、多様な働き方が求められるようになりました。リモートワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方が広がる中で、社員が自分の価値観に合った企業を選ぶことが重要視されています。

カルチャーフィットを重視することで、企業は社員一人ひとりが自分らしく働ける環境を提供することができ、結果として社員の満足度やモチベーションが向上します。例えば、多様な働き方の実現を目指す企業では、リモートワークを推進することで社員の就業満足度の向上を実現しています。

カルチャーフィットを意識することのメリット

採用活動でカルチャーフィットを意識することにより、企業にさまざまなメリットをもたらします。具体的には次のようなメリットが挙げられます。

  1. 従業員エンゲージメントが向上する
  2. 社内コミュニケーションが円滑になる
  3. 定着率が向上する

それぞれのメリットを詳しくみていきましょう。

従業員エンゲージメントが向上する

カルチャーフィットを意識することで、従業員エンゲージメントが向上します。企業の価値観や文化に共感する社員は、自分の仕事に対するやりがいや当事者意識を持ち、高いパフォーマンスを発揮するでしょう。

また、自分の役割を超えて他部署と連携するなど、広い視野を持って積極的に活躍することが期待されます。このように、社員が企業のビジョンに共感し自分の役割に誇りを持つことで、業務の質も向上します。

社内コミュニケーションが円滑になる

カルチャーフィットが実現されると、社内コミュニケーションが円滑になります。価値観が一致している社員同士は、自然と共通の言語や行動様式を持つため、意思疎通がスムーズになります。

個性を尊重しつつも、会社が目指す方向や、会社が大切にしている風土や文化への共感は、組織としての一体感を築くうえで欠かせません。社員同士の温度差によって、プロジェクトの進行に悪影響を及ぼすためです。このように、カルチャーフィットは効果的なチームワークを促進し、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

定着率が向上する

カルチャーフィットを重視することで、社員の定着率が向上します。企業文化と価値観が一致している社員は、職場に対する満足度が高く、長期間にわたって働き続ける意欲を持ちます。あらゆる業界で人材採用難がさけばれる中、給与・待遇といった条件面だけで社員をつなぎ留めることは難しくなっています。

求職者からすれば複数の選択肢がある中で、いかに「この会社は自分の価値観に合っている」と感じてもらうことが大切だといえるでしょう。

カルチャーフィットを重視した採用活動の進め方

カルチャーフィットを重視した採用活動は、企業と社員の長期的な成功を支える重要なステップです。ここでは、具体的な進め方について解説します。

自社のカルチャーを言語化する

まず、自社のカルチャーを明確に言語化することが重要です。企業の価値観やミッション、ビジョンを具体的な言葉で表現することで、候補者に伝えやすくなります。

企業理念を社員全員で話し合い、具体的な行動指針としてまとめることで、企業文化を具体的に言語化し、候補者とのカルチャーフィットを見極めやすくします。

カルチャーに合った採用ペルソナを設計する

次に、カルチャーに合った採用ペルソナを設計します。採用ペルソナとは、理想的な候補者像を具体的に描いたもので、これを基に採用活動を進めることで、カルチャーフィットの高い人材を見つけやすくなります。

自社のカルチャーに合った人物像を明確にし、それに基づいて求人広告や面接プロセスを設計することで、企業文化と一致する候補者を効率的に見つけることができます。

カルチャーを外部に発信する

自社のカルチャーを外部に発信することも重要です。企業のウェブサイトやSNSを通じて、企業の価値観や文化を広く伝えることで、カルチャーフィットの高い候補者を引き寄せることができます。

例えば、ブログやSNSを活用して、社内イベントや社員インタビューを発信することで、企業の価値観に共感する候補者を集めることができます。

カルチャーフィットを意識した選考を行う

選考プロセスにおいても、カルチャーフィットを意識した手法を取り入れることが重要です。具体的な方法としては、以下のようなものがあります。

  • 1DAYインターンを実施し、候補者に実際の業務を体験させる
  • 人柄や志向性に関する質問を通じて、候補者の価値観を確認する
  • カルチャーフィットを判断するツール(例:適性検査、SPIなど)を活用する

これらの手法を用いることで、候補者の価値観や行動様式を客観的に評価し、カルチャーフィットを見極めることができます。

カルチャーフィット採用の注意点

カルチャーフィットを重視した採用活動は多くのメリットをもたらしますが、一方で注意すべき点も存在します。ここでは、カルチャーフィット採用の際に気を付けるべきポイントについて詳しく解説します。

人間力、業務スキルの見極めが弱くなる

カルチャーフィットを重視するあまり、人間力や業務スキルの見極めが疎かになる可能性があります。カルチャーフィットだけでなく、業務を遂行するために必要なスキルや能力も同時に評価することが重要です。

カルチャーフィットに偏った採用を行うことで、実際の業務スキルが不足している社員が増えてしまうことがあります。このような事態を防ぐために、スキルとカルチャーフィットの両方をバランス良く評価するプロセスを確立することが求められます。

設計までに時間がかかる

カルチャーフィットを正確に評価するためのプロセス設計には時間がかかる場合があります。自社のカルチャーを言語化し、適切な評価基準を設定するには、社内の関係者との綿密な協議と準備が必要です。

カルチャーフィットの評価基準を設計するために数か月を要することもありますが、その結果、より適切な人材を採用できるようになります。時間をかけてでも正確な評価基準を設けることが、長期的には企業の成長に繋がります。

バイアスが掛かる可能性がある

カルチャーフィットの評価には主観が入りやすく、バイアスがかかる可能性があります。評価者の個人的な価値観や先入観が影響を与えることを避けるために、客観的な評価基準を設けることが重要です。

カルチャーフィットを評価する際に複数の評価者を設定し、異なる視点から候補者を評価する仕組みを導入することで、バイアスを減らし、より公正な評価を行うことが可能です。また、評価ツールを活用することでもバイアスを抑制できます。

カルチャーフィットを重視した採用活動の事例

カルチャーフィットを重視した採用活動を実践している企業は多く、その成功事例から学べる点は多々あります。ここでは、具体的な企業の取り組みとその成果について紹介します。

サイボウズ株式会社

引用:サイボウズ株式会社

グループウェア開発を行うサイボウズ株式会社では、従業員の多様な個性を尊重しており、個性を発揮しながらチームでの役割を果たすために、全員が同じ理念に共感することに重きを置いています。

具体的には、採用活動において「共感」と「スキル」という指標を重視。また、企業理念である「存在意義(Purpose)」と「文化(Culture)」への共感も大切にしています。

また、チームに貢献できるスキルとして「あくなき探求」「知識を増やす」「心を動かす」「不屈の心体」の4つの要素を定義し、これらを評価基準にしています。これにより、カルチャーフィットする人材を見極め、組織全体の一体感とパフォーマンスの向上を実現しました。

参考:採用で大切にしていること|サイボウズ株式会社

ランサーズ株式会社

引用:ランサーズ株式会社

クラウドソーシング事業を展開するランサーズ株式会社では「ビジョン共感」を重要視しており、「本気で働きたい」という想いがある方との出会うための採用企画に注力していました。

そうした中で採用担当者は、採用業務の一部をアウトソースすることで、採用の質を高めることに成功しました。採用人数が増加する中で、ビジョンに共感する人材を効率的に見極めるため、書類選考や日程調整を外部に委託し、担当者がコア業務に集中できる環境を整えました。その結果、KPI設計やイベント企画、面談基準の作成に注力できるようになり、より自社のビジョンに共感した本気度の高い人材採用に成功しています。

参考:たったひとりで年間採用44名を実現したランサーズ・人事担当によるLancersの活用方法|ランサーズ株式会社

株式会社サイバーエージェント

引用:株式会社サイバーエージェント

インターネット広告やメディア事業を手がける株式会社サイバーエージェントでは、「オーナーシップカルチャー」を基盤にした採用活動を行っています。採用に全力を尽くし、年間で延べ1,000人の技術者が採用に協力しています。心理的安全性を確保し、挑戦する文化を支援するため、エンジニア評価項目にフォロワーシップを加えています。

また、「あした会議」という新規事業や課題解決の提案を行う場を設け、社員に提案と実行の機会を提供し、オーナーシップを発揮できる環境を整えています。これにより、社員一人ひとりが主体的に行動し、組織全体の競争力を高めています。

参考:「Build Up Always」 サイバーエージェントグループ全体の技術戦略 | CyberAgent Way

Tebiki株式会社

引用:Tebiki株式会社

動画マニュアル作成支援サービスを提供するTebiki株式会社では、採用面談を通じて候補者のカルチャーフィットを評価しています。職務経歴書や履歴書から、候補者の「スキル」と「性格」を見極め、面談前にその人の性格を把握する技術を活用しています。

例えば、履歴書の内容から候補者の価値観や行動特性を読み取り、カルチャーフィットを判断しています。このアプローチにより、企業の方向性に合致した人材を効率的に見極めることができ、組織の一体感を高めています。

参考:職務経歴書/履歴書からカルチャーフィットを読み解く方法 | Tebiki株式会社

まとめ

カルチャーフィットは、企業と社員の長期的な成功に欠かせない要素です。企業文化と個人の価値観が一致することで、社員の満足度が向上し、結果として組織全体の生産性や定着率も向上します。採用活動ではカルチャーフィットを意識することで、企業は持続的な成長を遂げることが可能です。

自社のカルチャーを明確にし、それに合った人材を見極めるためのプロセスを構築することが、採用成功の鍵を握ります。売り手市場と言われる中、求職者も単に条件や待遇で転職先を選ぶのではなく、自分の価値観に合うかどうかを意識しています。したがって、企業は長期的な視点で、自社の文化と個人の価値観の一致を図り、社員が安心して働ける環境を作り上げることが求められるでしょう。